知って得する!産業医科大Dr.による健康経営コラム

第9回KSP健康経営レポートの活用の仕方「要治療確認群」

KSPの健康経営レポートをご覧になったことはありますか?その中に「要治療確認群」という言葉が登場します。
今回は、この「要治療確認群」が何を意味するのか、そして経営者・人事担当者として何をすればよいのかを解説します。

従業員の健康診断の結果どこまで知っていますか?

健診機関から送られてきた健康診断の結果には、「異常なし」「軽度異常」「要経過観察」「要精密検査」「要治療」などの判定がつきます。

「要経過観察」「要精密検査」「要治療」のいずれかひとつでも該当する労働者は、全国で5割を超えています。つまり、働く人の2人に1人以上が何らかの異常を指摘されている状況です。これほど多いと、「自分だけじゃないから大したことないだろう」「毎年のことだから」と、健診の結果を軽く見てしまいがちです。また、「前回病院に行っても、生活習慣を改善するように言われて、薬が出なかったから、今年は行かなくてよいかな」と思う方もいるかもしれません。


「要治療確認群」はKSP独自の分類です

ここで注目していただきたいのが、健康経営レポートの「要治療確認群」という分類です。これは健診機関がつける判定ではなく、KSPのサービス独自の考え方です。

健診機関の判定は、「医療機関を受診すべきかどうか」という受診者本人の視点で行われます。一方、KSPの「要治療確認群」は、実際に治療を受けているか(受療状況)を確認するという「職場の健康管理の視点」による分類です。この分類に該当する従業員は、そのまま就業を継続させてよいか検討を要するレベルの健診結果ですが、医学的に管理(受診・治療)されていれば問題なく働ける可能性が高いと言えます。したがって、職場としては、まず現在の治療状況を確認することから始めてください。

健診機関の判定を追うだけでは見えにくい、「職場として何をすべきか」という観点をKSPが補っている——それが「要治療確認群」という分類の意義です。ぜひ、健康経営レポートの中でもとくに注目してください。

要治療確認群で確認すべき4つのこと

要治療確認群に該当する従業員については、次の4点を確認することが必要です。

  • 病院に行ったかどうか(受診の有無)
  • 病院でどのように言われたか(診断・指示の内容)
  • 治療が始まったかどうか(治療開始の有無)
  • 継続して通院しているかどうか(通院継続の有無)

ここで注意していただきたいのが、治療もしくは生活習慣の改善など、対応が取られたかです。従業員が病院を受診し、治療が必要なレベルであっても、医師から「まずは生活習慣を改善して、数か月様子を見ましょう。その後検査値が改善しなかったら薬で治療しましょう」と言われることは珍しくありません。そのとき、従業員本人は「薬も出なかったし、治療は必要ないと言われた」と受け取りがちです。しかし、生活習慣の改善指導も立派な治療の一環であり、改善が必要な状態であることに変わりはありません。「治療不要と言われた」と思い込んで通院をやめてしまい、その後も生活習慣が改善されないまま数値が悪化していくケースは非常に多いのです。

これらを把握することで、「医師から仕事を制限するよう言われているのに、会社が知らずにそのまま働かせていた」という事態を防ぐことができます。従業員の安全を守るだけでなく、会社としての安全配慮義務を果たすためにも欠かせない確認です。


「確認する」のは難しくありません

そうはいっても、「医学的なことはわからない」という方も多いと思います。でも大丈夫です。「健診で引っかかっていたけれど、その後受診したか?」と声かけし、上記の4点を確認ください。医師のような判断は必要ありません。また、KSPのオンライン相談メニューを通じて、受診後の状況や働き方についての相談も可能です。


まとめ

労働者の2人に1人以上が健診で何らかの異常を指摘されている今、「毎年のことだから」と流してしまうことが最大のリスクです。KSP独自の分類である「要治療確認群」は、職場での健康管理が必要な群を指します。健康経営レポートをご覧の際は、ぜひこの分類に注目してください。

「健康経営、何から始めればよいかわからない」という方は、ぜひ健康経営レポートをもとに、一緒に最初の一歩を踏み出しましょう。

「健康経営レポート」には、職場で実践できる健康づくりのヒントが数多く盛り込まれています。 活用方法などについては、「レポート活用術」をぜひCheckしてみてください。
筆者紹介
永田 昌子(ながた まさこ)
産業医科大学 医学部 両立支援科学 准教授

医学博士。専門は産業医学と有病者の就労支援。

平成13年産業医科大学医学部卒業、企業の専属産業医の経験を経て、平成20年より産業医科大学 令和4年1月より現職。

※2019年より「産学連携プロジェクト」として、大同生命保険㈱・㈱メディヴァとともに中小企業向け健康経営実践モデル構築のため協働参画中。