野菜が多めの食生活は本当に健康的なのか?




野菜は1日に大量に摂取しなければならないと誤解されがちですが、本当に必要な量はそれほど多くありません。大切なのはバランスです。
今回は「野菜が多めの食生活は本当に健康的なのか?」をテーマに、簡単にバランスよく健康的な食事を摂るためのコツをお教えします。
1.野菜も、野菜以外の食べ物も、どちらも健康的
野菜を適量食べる食生活は、もちろん健康的です。
しかし野菜ばかりに注目して、それ以外のタンパク質や糖質、脂質などをバランス充分摂れないのであれば、健康的とは言えなくなります。
CMなどの影響で野菜を山盛り食べる必要があるという考えが広まっているようですが、野菜以外の食べ物からでも多くの必要な栄養素を摂取しなければなりません。
むしろ野菜を食べてお腹が膨れてしまい、充分なタンパク質などが摂取できなくなることの方が問題です。
タンパク質が不足すると、身体を支える筋肉が分解され、筋肉量が減っていきます。
その結果、基礎代謝量も減って太りやすい体質になるのです。
それだけではありません。
高血圧や糖尿病、関節症や低体温症など、タンパク質不足による筋肉量減少はさまざまな病気の要因になる可能性があります。
さらに筋力が減少すると、体力も低下してしまいます。
年齢を重ねてますます重要になるタンパク質は、糖質と一緒に摂らなければ筋肉を生成できないなど、栄養素はお互い作用し合いながら消化・吸収されるようにできています。
よく言われる「食事はバランスよく」は、現実的で的を射た言葉なのです。
2.結局「バランス良く3回食べる+運動」が身体に良い理由
例えば、1日の食事メニューをこのようなものだとします。

「全体量が多い」「野菜が少ない」などと思われる方が多いのではないでしょうか。
実はこのメニュー、タンパク質や野菜、白米などの推奨摂取量を満たし、総エネルギー量は1912kcalという標準的な3食の食事例。
これに1週間トータルで150分の運動、または1回300kcalの運動を週3回行うのが理想とされています。
厚生労働省発表の推定エネルギー必要量を見ても、50歳以上の男性なら活動量が少ない人で1日2,100kcal、50歳以上の女性でも普通の活動量があれば1日1,750〜1,900kcal摂取できる食事が必要です。
みなさんは、野菜ばかりを食べてタンパク質や脂質を軽視していませんか?
栄養の偏りは外見だけでなく、体調にも影響を及ぼします。
タンパク質や炭水化物をしっかり摂取して、身体を動かし、元気で健康な身体を維持することを心がけてください。
3.なぜ1日3食がベストなのか
3食規則正しく食事をするのが大切な理由についてもご説明しましょう。

食事をするとアミノ酸が筋肉に運ばれて、筋肉が作られます。
その後3時間ほど経つと空腹になり、今度は筋肉や脂肪が分解されてエネルギーに変換され始めます。
特に夕食後から翌朝の朝食までは絶食状態になるので、分解が進んでしまうのです。
脂肪を分解する、と聞くと「痩せるかもしれない」と思うかもしれませんが、同時に筋肉も分解されてしまうので要注意。
プチ断食などでダイエットに挑戦する人もいますが、脂肪のみならず筋肉の分解もどんどん進むので、特に中高年以上の方にはおすすめできません。
また「寝る前に食べるのはNG」と言われることが多いですが、チーズや無糖ヨーグルト、牛乳などのタンパク質を軽く摂っておくと、睡眠中に筋肉量を減らさずに済みます。
4.頑張らずにバランスの良い食事を摂るには?
食事の基本として「一汁三菜」を目指して料理をするご家庭も多いでしょう。
ただ、用意するメニューが多い分、手間がかかってしまいますよね。
そこでおすすめしたいのが、具だくさんの味噌汁(スープ)を用意して「一汁一菜」にしてしまうことです。
いつも副菜として用意しているメニューの野菜を全て味噌汁に入れれば、あとはメインのメニューとご飯を用意するだけ。
具だくさん味噌汁は味付けなどの手間がなく、水溶性の栄養素も汁ごと摂取できるためオススメです。
私も普段から具だくさん味噌汁を作り置いてメインの料理だけを毎食作るなど、バランスのよい食事を手早く準備できるように心がけています。
また、毎回の食事で適量のタンパク質を摂取するときに目安にしたいのが「手のひら」。
100g程度の肉や魚に含まれるタンパク質の量(16〜20g)が大体一食分で、量の目安が手のひらサイズです。
この「手ばかり」を活用すると便利です。

また、それよりもタンパク質が少ない場合は、牛乳1杯、納豆1パックなどを足すだけで問題ありません。
ちなみに晩酌したい場合は、お酒にエネルギー源の成分が多いので、ご飯をお酒に置き換えて、それ以外は普通の食事のようにメイン(肉・魚)や具沢山味噌汁などをしっかり食べておけば大丈夫。
ただしお酒を飲み過ぎると満腹中枢が働かなくなり、コントロールができなくなるので、適量を守ることが大切です。
5.タンパク質は「動物性と植物性」を3食に分けて摂る
タンパク質を摂る際、1回の食事に動物性タンパク質(肉・魚・卵など)と植物性タンパク質(納豆・豆腐・枝豆など)を織り交ぜましょう。
動物性タンパク質は身体への消化吸収速度が速く、植物性タンパク質はゆるやかに吸収されるのが特徴です。
この2つを同時に摂ることで、単独で摂るよりも効率的に吸収され、筋肉の合成が促進されることが分かっています。
ちなみに動物性・植物性タンパク質と必要栄養素をほぼ完璧に摂れる食事は、卵がけ納豆ご飯。

唯一入っていないビタミンCをオレンジなどで補えば、これぞ完全食。
時間がなくても用意できるものなので、ぜひ取り入れてみてください。
タンパク質は「摂りだめ」ができない栄養素。
一度に大量に摂取しても、吸収されない分は身体の外に排出されてしまうので、朝・昼・晩の3食で地道に摂るようにしましょう。
なぜこんなにタンパク質の話ばかりをするかというと、日本だと「健康食=粗食」のイメージが強く、結果タンパク質不足になるケースが多々あるからです。
ただでさえ運動習慣のない日本人はタンパク質不足によりさらに筋肉量が減り、基礎代謝が低下することで結局肥満気味になり病気を引き起こします。
健康的で元気な身体は、「野菜」だけでは手に入らないのです。

米国スポーツ医学会認定運動生理学士
数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。
2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担当。
ランニングなどのパフォーマンスアップや健康維持増進のための講演、執筆など多方面で活躍。
近年は超高齢化社会における健康寿命延伸のための啓蒙活動にも注力している。