第4回「心の問題で1ヵ月以上休んでしまう従業員はいますか?」


コラム4回目は「心の問題で1ヵ月以上休んでしまう従業員はいますか?」です。
コラム3回目まで健康診断や生活習慣など身体疾患について触れましたが、4回目は心の健康についてお話しします。
心の問題で1ヵ月以上休んでしまう従業員はいますか?
心の健康問題により、仕事を休む従業員はどの程度いるでしょうか。
過去1年間に、メンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業もしくは退職した労働者がいた事業所の割合は、大企業では9割を超えています。小規模の従業員10-49人の事業所は5.4%、30-49人の事業所は9.2%、50-99人の事業所は25.5%との割合でした。
従業員がメンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業することは、けっして稀ではないことがわかります。
(厚生労働省・令和3年労働安全衛生調査)

小規模な職場で、従業員1名が1ヵ月以上休業もしくは退職してしまうことは、会社にとって大きな影響があるでしょう。
休んだ人の仕事の穴埋めや、休んだ人とのやり取りのみにとどまらず、休んだ人が職場に復帰するときの対応検討、同僚への説明などなど、時間と労力が必要です。それは会社にとって、大きな損失になると思われます。
生活習慣病と同様に、メンタルヘルス不調者をゼロにすることはなかなか難しいことです。
しかし「健康経営」を進めることでメンタルヘルス不調がもたらす会社への損失を減らし、いきいきと働く従業員が集う、人がやめない職場を作りたいものです。それらの対策について、今後このコラムでも紹介していきたいと思います。
今日は2点、説明します。
- 心の病気は、甘えではないこと
- 心の病気は、早期発見が大切なこと
心の病気は、甘えではない
上司から怒られた翌日に職場に来ることができなくなった若手に対し、「○○は甘えているだろ。昔はそんな風に怒られるのなんて日常茶飯事だったわ」という上司の声を聞くことがあります。
いわゆる「若手」が受けている教育は、昭和世代が受けてきたものから大きく変化しています。
厳しく叱られる、怒鳴られるなどの経験がない人も多く、大きな声や厳しい表現に驚き、怖がってしまうことはあるでしょう。仕事を始めたばかりであれば、仕事に向いていないのかもしれないなどと思うかもしれません。
情報にあふれた現代社会ですから、自信を失ったときに、成功している同年代の情報を目にすることで、他人と比較してしまうかも。あるいは、大量の情報に埋もれて、判断を下すのが難しくなり、不安になっているのかも・・・。
甘えではなく、ありふれた防衛反応かもしれない⸻ そんな風に相手を思いやる心が大事です。
心の病気は早期発見が大切
心の病気は、他の身体の病気と同じで、早期発見・早期対応が重要です。
メンタルヘルス不調の場合、周囲も本人の変化に気づくことができます。「おかしいな」と感じたときには“声かけ”をして、必要な支援を求めるよう働きかけていただくとよいと思います。
または外部サービスを利用して、メンタルヘルス不調者への対応にかかる経営者や管理職の手間を出来るだけ少なくするというのも選択肢の一つだと思います。
職場のメンタルヘルス不調と向き合う際には、心の病気は「甘えではないこと」
「早期発見が大切なこと」に配慮した対応を!
次回コラムでは、早期発見のポイントについてお話ししていきます。


「うつ状態の診断書で休んでいる社員がいる」「遅刻や欠勤しがちな社員が気になっている」「昼間居眠りするなど、眠れてなさそうな社員がいる」「飲酒でトラブルになったことがある社員の酒量が、さらに増えているようだ」など従業員の変化に対して、保健師が必要な事柄をアドバイスします!

医学博士。専門は産業医学と有病者の就労支援。
平成13年産業医科大学医学部卒業、企業の専属産業医の経験を経て、平成20年より産業医科大学 令和4年1月より現職。
※2019年より「産学連携プロジェクト」として、大同生命保険㈱・㈱メディヴァとともに中小企業向け健康経営実践モデル構築のため協働参画中。