第1回「中小企業が健康経営を始めるキッカケ」


こんにちは。産業医科大学の森です。
いよいよ始まりました、健康経営定期便。
従業員のみなさんの健康管理に、ひいては健康経営の実践に、活用していただけたら私も嬉しいです。
このサイトでは、私たちがこれまで健康経営の専門家として接してきた事例や研究成果等のご紹介をメインに、日ごろ思うことなどを筆のおもむくままに書かせていただこうと考えています。
第1回では、「中小企業が健康経営を始めるキッカケ」です。
なぜ健康経営を始めたのか
私はこれまで健康経営に積極的に取り組んでいる経営者の方に多数お会いしてきました。
小さい企業で、失礼ながらそれほど余裕があるとは思えないけれど、精力的に取り組まれている方もいました。その方々に「なぜ健康経営を始めたんですか?」と質問をしてきました。
そのなかで、キッカケになった従業員がいたんだということを教えてもらったケースをご紹介します。
糖尿病を放置していて若くして透析となり、その後心疾患で早くに亡くなってしまった従業員のKさん。Kさんは、仕事に真面目に取り組む方で、経営者の方は頼りにしていたそうです。Kさんが透析になってから、振り返ってみると以前から健康診断で血糖値が高く「要治療」と判定されていたことが分かりました。Kさんは症状がないため、病院には行っていなかったようです。Kさんに病院に行くよう言ったこともあったように覚えていますが、病院に行ったかどうかの確認はしていなかったとのことです。
健康診断は、会社がお金を出してやっていることなのに、役立てることが出来ていなかったことを経営者の方は反省し、そこから従業員の健康管理に関する取組みを始めたとのことでした。
高血圧や糖尿病、高脂血症などの代表的な生活習慣病は、健康診断で確認することが出来ます。健康経営の第一歩は健康診断を活用することです。受けっぱなしの健康診断から卒業し、従業員が自身の生活習慣を見直したり、治療することを促す、治療しているか確認することから、健康経営を始めてみませんか。

2021年より日本産業衛生学会 理事長に就任。
健康・医療新産業協議会、同健康投資ワーキンググループ主査、 健康経営度調査事業基準検討委員会座長等として、特に中小企業の健康経営の推進に貢献。
著書に『マネジメントシステムによる産業保健活動』(労働調査会)など多数。
※2019年より「産学連携プロジェクト」として、大同生命保険㈱・㈱メディヴァとともに中小企業向け健康経営実践モデル構築のため協働参画中。